「東京のマンションは1億円」は本当か——実際に買われた4.1万件で確かめる

2026-08-22

「東京のマンションは1億円」——あの数字は、何の数字なのでしょうか。実際に成立した中古マンション取引41,207件の分布と並べて確かめました。

3行でいうと

  • 「1億円超え」は本当。ただしそれは新築・平均値・23区の話です。国の記録に残る中古の実取引では、1億円以上は全体の8.7%。23区の2LDK以上に限れば22.9%で、条件を報道に近づけるほど「1億円」は現実味を帯びます
  • 間取りを2LDK以上に揃えた中央値(典型の広さ65m²)で、東京23区は6,400万円・通勤圏25市区なら3,800万円。「東京」のどこまでを含めるかで数字は大きく変わります
  • 同じ2LDK以上でも市区の中央値には8.9倍の開きがあります(千代田区2億円〜松戸市2,250万円)。「東京の相場」は1つの数字では言えません

「1億円」はどこから来た数字か

2023年、「新築マンション、東京23区で初の1億円超え」という見出しがニュースになりました[1]。元データは不動産経済研究所が公表する新築マンションの平均価格(東京23区)で[2]、2025年の年間平均は1億3,613万円と、3年連続で1億円を超えています[3]。これは間違いではありません。ただし条件が3つつきます——新築・平均値・23区です。

平均値は、少数の超高額物件に強く引っ張られます。実際、同じ不動産経済研究所の発表自身が、平均とは別に中央値(順に並べたときの真ん中)を併記していて、2023年の東京23区は平均1億1,483万円に対して中央値8,200万円。その差は3,283万円あります[2]。「真ん中の物件」は平均よりだいぶ安い水準です。

見る対象を、新築から中古へ、平均から分布へ、23区から通勤圏まで移します。国土交通省の不動産取引価格情報に記録された、東京23区と通勤圏25市区の中古マンション取引41,207件(2024年〜2026年)で確かめました。

観測1: 買われた価格の分布

総額の分布ヒストグラム・中央値/平均/1億円ラインつき
総額の分布ヒストグラム・中央値/平均/1億円ラインつき

41,207件の中央値は3,500万円、平均は5,126万円。ここでも平均は中央値より1,626万円高くなっています。高額な取引が平均を引っ張る構図は、新築でも中古でも同じです。

1億円以上の取引は3,578件(8.7%)。確かに実在しますが、多数派ではありません。逆に3,000万円未満が39.0%を占めます。

ただし、この「中央値3,500万円」はそのまま覚えて帰る数字ではありません。20m²のワンルームも65m²のファミリー向けも混ざっています。何m²の話かを決めないと、価格の数字は比べられません。このサイトの記事で繰り返し出てくる注意です。

観測2: 広さの帯で分けると、中心が3つに分かれる

帯別の典型・総額×広さ
帯別の典型・総額×広さ
取引数総額の中央値真ん中半分の範囲(p25〜p75)典型的な広さ
単身向け(1R・1K・1DK)13,7862,500万円2,000〜3,000万円20m²
中間(1LDK・2K・2DK)5,0084,200万円2,900〜6,000万円40m²
ファミリー(2LDK以上)19,5945,100万円3,500〜7,700万円65m²

ただし、この3つは重なっています。2LDK以上の13.4%は単身向けの中央値(2,500万円)以下で、37.1%は中間帯の中央値(4,200万円)以下です。「別の世界が3つある」というより、中心がずれた3つの山が重なっていると言うほうが正確です。

「家族で住むマンションを買う」文脈なら、見るべきは2LDK以上の行=中央値5,100万円(48市区全体)です。

観測3: 「東京」の範囲で数字が変わる

2LDK以上に絞って、東京23区と通勤圏25市区(川崎・横浜北部・川口・市川・船橋など)に分けます。

典型的な広さはどちらも65m²で同じ。築年の中央もほぼ同じ(23区23年・通勤圏26年)。つまりこの2,600万円の差は、広さや築年の中央値では説明できません。ただしこれは「23区だから高い」という意味ではありません。揃えたのは広さと築年の中央値2つだけで、駅からの距離・都心への近さ・建物の規模や設備は揃えていません。ここで言えるのは、広さと築年の中央値が近い者どうしを比べても2,600万円の差がある、までです。

23区では2LDK以上の4〜5件に1件(22.9%)が1億円を超えています。「1億円」という実感は、23区・ファミリー向けの世界では誇張ではありません。

一方、通勤圏まで広げれば同じ広さの中央値は4,000万円を切ります。

観測4: 上端と下端では8.9倍離れている

市区別・2LDK以上の総額中央値・48市区
市区別・2LDK以上の総額中央値・48市区

2LDK以上の中央値を48市区で並べると、上は千代田区2億円(n=116)・港区1億8,500万円、下は船橋市2,700万円・松戸市2,250万円(n=442)。上端と下端で8.9倍です。

ただし8.9倍はいちばん上といちばん下を割った数字です。2位と47位なら6.85倍、5位と44位なら2.97倍まで下がります。また両端は築年が18年と30年、面積も70m²と65m²で揃っていません。これは「千代田区だから8.9倍高い」という意味ではありません——場所以外の差もこの倍率に含まれています。

それでも「東京の相場はいくらか」への正直な答えは変わりません。どこの・何m²・築何年の話かを決めないと答えられない、ということです。

読み方(誤読しないために)

データの限界

自分で確かめるには

  1. データは定期的に更新されるため、ラボや地図で見える値は本文の時点(2024年Q1〜2026年Q1の取引)と少しずれることがあります
  2. SUMIMAEのデータラボ「取引そのものの分布」で、41,207件を市区・間取り帯で絞って分布を確かめられます データラボで開く ›
  3. 地図では相場バブルをクリックすると、町ごとの個別取引一覧(間取り・坪単価の分布つき)が見られます
データラボ「取引そのものの分布」の実画面。条件を決めて分布を見られます
データラボ「取引そのものの分布」の実画面。条件を決めて分布を見られます

ここに挙げたのは、同じデータを自分の目で見るための入口です。将来的には、各記事の分析そのものを画面上で再現できるように整備していきたいと思っています。

出典

  1. 日本経済新聞「新築マンション、東京23区で初の1億円超え 1〜6月」(2023年7月)=2023年上半期の平均(1億2,962万円)。本文で並べている1億1,483万円は同じ年の通年の平均で、別の期間の数字です
  2. 不動産経済研究所 プレスリリース(2024年4月2日付)。2023年の平均: 首都圏8,101万円・東京23区1億1,483万円、中央値: 首都圏6,098万円・東京23区8,200万円
  3. nippon.com「マンション価格、東京23区は平均1億3613万円―不動産経済研究所」(2026年1月・2025年年間データ)
  4. 東京カンテイ プレスリリース「三大都市圏・主要都市別/中古マンション70㎡価格月別推移」(2026年3月24日)。集計は売り希望価格ベース・ファミリータイプのみ

国土交通省 不動産情報ライブラリ「不動産取引価格情報」(中古マンション等・東京23区と通勤圏25市区の計48市区・2024年Q1〜2026年Q1・41,207件)をSUMIMAEが加工しました。数値は取引記録の集計値であり、各機関の公表値ではありません。

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